舞子公園ツーリングレポート

冷たい水で顔を洗い、髭を剃ってから家を出た。時刻は既に正午をまわり、外はだいぶ暖かくなっていた。道路の凍結を危惧し遅めの出発としたが、もう少し早く出発しても良かったかもしれない。
自転車で10分ほどのガレージに着くと、1ヶ月前と変わらずWがいた。思わずほっとする。

ガレージの扉を開けるたびに、消えてしまってないか不安になるのは毎度のことだ。警備態勢に不足がないことは重々承知の上だが、それでも一抹の不安を拭い去ることはできずにいる。
行き先は舞子公園に設定した。深い理由はなかった。積雪がなく、それなりに近いところならばどこでもよかった。バイク乗りに最も重要視されるのは目的地ではない。

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 ガレージを出て90分ほどで到着した。
出発時とは変わり、寒い。瀬戸内海由来の風が冷気を纏い、陸に容赦なく吹き付けている。釣り人が多数見られたが、この状況で釣り糸を垂らし続ける忍耐に脱帽した。魚が釣れている様子はなかった。
釣り人のほかにも多くの人間がいた。薄着でランニングする青年、談笑しながら散歩する老夫婦、何度も転びながら自転車の練習をする女の子。年齢も服装も様々でそれぞれ自分の時間を過ごしているようだったが、その中でもイヤホンで耳を閉じ、海を見つめる若い男が印象に残った。

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膝を抱えて座り、背中は丸めている。冷たい風が体を揺らしても、視線が動くことはない。余程考えるべきことがあるようだった。彼は私が舞子公園を後にする直前まで、そこに座り続けていた。誰かと談笑しながら過ごす人が多いこの空間で、彼の存在は異質だった。私にできることは何もなかったが、せめて彼が今後少しでもうまく世を渡っていけるよう祈った。

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孫文記念館もとい移情閣の由来は、「建物から四国などの多様な風情を楽しめるから」だという。入館はしなかった。
孫文という人物のことをよく知らなかった。勉強する気もなかった。過去の偉人がこれからの私の人生に係わることは、まずない。

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淡路島に一度取りつき、その後四国に繋がる。
私にいつ長期の休みが取れるかは不透明だが、実は四国でのバイク旅を夢見ている。社会人には金も時間もないが、せめて夢を見ることくらいは許されるだろう。
今の職に不満はないが、このまま緩やかに死んでいくことを考えると、怖い。学生の頃はいつ頃までに雪山を始め、いつ頃までに南極に行くのだと真剣に考えていたが、そちらで早死にする人生も良かったかもしれない。

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バイク乗りも釣り人も、物事を成す過程を楽しんでいる。舞子公園ではメバルや鯛が釣れるというが、彼らはそれらが釣れなくとも構わないらしい。もちろん釣れることに越したことはないが、彼らは釣れなかった原因を自ら突き止めることに面白さを見出す。ただ魚が食いたいから竿を振るうわけではない。
趣味とはそういうものである。無趣味の人間にはこれが分からない。

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Wは販売開始直後に購入した。金銭的に無理をしたがそれでも乗りたかった。販売日と大型二輪免許を取得した日が比較的近く、月並みな表現だが運命を感じた。
高嶺の花だったWも、今では私の心の穴を埋める良き相棒である。

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舞子浜近くの温泉に入るつもりだったが、バイクでは進入ができず断念した。街はバイク乗りに優しくない。
急遽調べなおし、神戸市内の温泉に行くことにした。料金は400円ほどと比較的安く駐車料金もかからない。失礼ながら外観で躊躇したが、中は意外にもしっかりしていた。入れ墨の入った男が多かったが、それも土地柄なのだろう。

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最後になるが、舞子公園の駐車場を紹介しておく。
車はここで駐車が可能だが、バイクは停めることはできない。二輪車駐車エリアはこの駐車場を背に右折、2つ目の信号を曲がったところにある。ホテルセトレの近くである。

 

兵庫県神戸市垂水区東舞子町205  2017年2月26日